プラタナス

日記

真夜中のステージ、スポットライトは冷たい月光のように
彼女の姿を、静寂の中に浮かび上がらせる。
グラスの中の琥珀色の液体が、ピアノの低音に震えていた。
南部の風は、甘いマグノリアの香りに
言いようのない重みを混ぜ込んで運んでくる。
誰もが直視を避けるその情景を
彼女の歌声は、魂を削るようなブルースに変えた。
「南部の木には、奇妙な実がなる」
その一言が、弾丸よりも深く闇を貫く。
葉に刻まれた記憶、根に沈む嘆き。
揺れているのは、風のせいだけではない。
踏みにじられた尊厳が、音もなくそこに漂っている。
最前列の男が、マッチを擦った。
その小さな火が、告発者の瞳に映る。
背後に迫る影、裏通りの足音、静かに忍び寄る圧力。
それでも彼女は、歌うことを止めない。
ポプラの枝から示される、静かな孤独。
それは、時が経てば風化し、雨に流され
歴史の隅に追いやられるはずの、声なき叫び。
_夜が明けることはない_
ただ、彼女の歌声だけが
冷え切ったコンクリートの街に、消えない記憶を残していく_


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