ストレス解消法⑨
「オーバーワークとは?原因やもたらす症状、疲労を蓄積しないための対処法を解説」
働きすぎの状態が長く続く「オーバーワーク」になっていませんか?「最近、疲れがとれない」「元気が出ない…」と感じるこの疲労感は「休息が必要」という身体からのSOSサイン。日々の仕事を見直すとともに、疲労回復に努めることが大切です。今回は、身体の疲れのメカニズムや、オーバーワークの原因と対処法、疲労を蓄積しないための対処法について解説します。
*オーバーワークによる疲れは身体からのSOSサイン
オーバーワークは、言い換えれば過重労働のこと。その人にとって負担が重すぎる長時間労働などで、働きすぎになっている状態を指します。
通常、日々の疲れは休息や睡眠、気分転換、栄養補給などで回復することができます。しかし、オーバーワークで長期間にわたって身体やこころに大きな負荷がかかり続けると、一時的な休息などでは疲労がなかなか改善されにくくなることが報告されています。
そもそも疲労とは、心身への過度のストレスが重なって起こる「作業能率(活動能力)が低下した状態」です。これは、休息の必要性を知らしめ、このまま放置すると健康が損なわれてしまう、という身体からの警報サイン(アラーム)でもあります。休んでも疲労が回復しないオーバーワークの状態が続くと、パフォーマンスの低下だけでなく、ほとんどすべての臓器の疾患、がん、アレルギー疾患、精神障害などの病気を発症するリスクも高まるため、過重労働が問題視されているのです。
明確な定義はありませんが、残業時間や休日労働時間などの時間外労働が「月45時間」を超えて長くなるほど、健康が損なわれてしまう可能性があるといわれています。これに対して近年、時間外労働の上限が罰則つきで規定されるなど、国としても厳しく管理する体制が整えられつつあります。
*「疲れ」を感じるとき、身体の中では何が起きている?
人が「疲れたな」と感じるとき、身体の中では何が起こっているのでしょうか?
私たちの身体の中では、あらゆる細胞が日夜稼働しています。体内の細胞は、生命活動で発生する活性酸素によってダメージを受けます。このダメージによって細胞の活動能力、つまりその人自身の活動能力が落ちた状態が「疲労」です。
傷ついた体内の細胞を修復するためには、非常に多くの修復エネルギーが必要です。しかし、オーバーワークが続くことで修復エネルギーが不足していると、体内の細胞へのダメージが修復されることなく蓄積され、細胞の調子が悪くなっていきます。
このとき、体内の細胞の傷害を感知した免疫系細胞がシグナルを脳神経系・内分泌系などに送ります。脳は、そのシグナルに含まれる身体のどこの細胞がどの程度損傷しているかという情報によって「疲労の程度」をキャッチしていることがわかってきています。その感覚が「疲労感」というものです。
つまり、疲労は休息の必要性を知らせ、体内の細胞が過剰活動によって疲弊してしまうのを防ぐための警報だといえます。疲労の自覚症状としては、活動意欲の低下、だるさ、脱力感、「これ以上活動したくない」という不快感などが挙げられます。
身体の中での出来事は、人間の生命活動、そして社会活動へと大きく影響を及ぼします。人が生活(仕事、介護、育児、学業、運動など)においてオーバーワークをしているとき、それらを乗り切ろうと身体の中でも細胞や各組織においてオーバーワークが起こっています。身体、そして生活上でのオーバーワークは地続きであり、心身の状態と生活上の状況の双方に気を配ることが大切です。
*オーバーワークの原因は?
オーバーワークになる原因は、環境によるものと、個人によるものの二つに大きく分けられます。また育児・介護など、ライフステージごとの場合や、仕事・学業・スポーツ上のトレーニングなど個人の状況によって左右されるものもあり、双方が重なる場合も考えられます。ここでは、特に仕事の場面にフォーカスし、職場や企業側の管理体制など周囲の環境による原因を具体的に解説していきます。
人手不足
職場の人手不足のため一人当たりの業務量が多くなり、オーバーワークになってしまうことがあります。ぎりぎりの人数でのシフト制の勤務環境など、休みたくても代わりの人が見つからず慢性的なオーバーワークになることも少なくありません。
業務を残業なしに処理するためには、人員・業務量を見直すことが必要です。また、特定の人しか担当できない業務がある場合、業務量が増えたときにその人の負荷が大きくなり、オーバーワークに発展してしまうこともあるでしょう。
仕事の特性
職業や職場、個人の役職や立場など、担っている仕事の特性によって残業せざるを得ない状況を生んでしまっている可能性もあります。
例えば「顧客からクレームや要望変更など突発的な業務が生じやすい」「ノルマ、目標の水準が高い」「締め切りや納期にゆとりがない」といったケース。部下・後輩の指導や他の人の仕事をカバーするために残業をしている場合もあるでしょう。
その他、勤務時間が労働者の裁量に委ねられている「裁量労働制」で働いている人も注意が必要です。クリエイティブ職や研究職、資格が必要な専門職などの裁量労働制の職種は、自由な働き方ができる一方、求められる成果への強いプレッシャーを感じたり、時間に制限がないため長時間労働になったりしてしまう懸念もあります。
コミュニケーション不足
意外かもしれませんが、コミュニケーションが不足している状況も、オーバーワークの原因になります。情報共有をし合う習慣がない、したとしても頻度が少ない環境では、タスクに対する客観的な見直しがしづらく、指摘もされづらいでしょう。
さらに、急に頼まれる業務に振り回されることが多かったり、スケジュールに余裕がなかったりすれば、冷静に業務の優先順位がつけられず、業務量が膨らんでしまうことも。
実際に、コミュニケーションが円滑である、同僚間で仕事のノウハウを教える風土がある、上司が就労上の問題を理解しているという職場では、労働時間が短い傾向にあるという報告もあります。
職場の雰囲気
職場の雰囲気、上司や同僚などの考え方もオーバーワークに関係します。働き方改革が進められてはいるものの「仕事以外の時間を犠牲にしてでも、会社に貢献すべきだ」といった考え方が根強い職場では、有給休暇を取りづらかったり、定時で仕事を終わらせて帰ることに抵抗感があったりするでしょう。
また、上司や同僚など周りの目を気にして残業せざるを得ない「付き合い残業」を生んでいるケースもあるようです。
仕事を断りづらい状況
上下関係と集団意識が強い職場では、仕事を頼まれたら断りづらく、自分の業務量以上に引き受けてしまうことも。
そもそも、職務内容や責任範囲が曖昧な日本の雇用契約では、「自分がやらなくてもよい仕事かどうか」という判断がつきづらいという特徴があります。そのため断る理由もつくりにくく、頼まれた仕事は基本的には請け負ってしまい、オーバーワークにつながっている可能性があるでしょう。