眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

〒郵便  配達されない手紙

日記

雨の午後は、古いタイプライターの音がよく響く。
デスクの引き出しの奥、
バーボンの空き瓶と錆びたライターに挟まれて、
その手紙は、まだ息をしている。
宛先は、もう地図にはない街の
二度と開かないはずの扉。
切手は貼られていない。
届けるべき相手は、去年の冬、
煙霧の匂いだけを遺して、風になった。
「元気でいるか」
たった一行、それだけを書き込むのに、
俺は三晩と、安物のタバコを一箱使い果たした。
書けば書くほど、言葉は指の間からこぼれ、
都会の排水溝へと消えていく。
郵便受けに投げ込めば、
この痛みにも決着がつくのだろうか。
だが、配達員は神様じゃない。
天国へのルートも、地獄への裏道も、
彼らの地図には載っていない。
手紙の角は、少しだけ折れている。
何度も読み返し、何度も封を閉じようとして、
結局、俺の臆病さがそれを止めた。
伝えたかったのは、愛でも後悔でもない。
ただ、お前がいないこの街の空気は、
少しばかり、吸い込みにくいということだけだ。
マッチを擦る。
小さな火が、未練をじりじりと飲み込んでいく。
灰皿に積もった白い屑は、
届かなかった言葉たちの墓標だ。
窓の外では、また新しい雨が降り始めた。
俺は最後の一口を飲み干し、
消えた火の代わりに、冷たい孤独をポケットにねじ込む。
配達されない手紙は、これでいい。
俺の胸の奥、
一番深いところにあるポストに、
永遠に投函されたままでいい_


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