眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

面倒な依頼者2

日記

カウンターの端で、そいつはまた「真理」を語り始めた。
剥き出しの言葉が、安物のウイスキーのように喉を焼く。
「俺のロジックに穴はない。だろ?」
同意を求める視線が、銃口よりも執拗に俺を追う。
語られるのは、世界の仕組みでも、組織の裏切りでもない。
いかに自分が正しく、周囲が無能かという、使い古された自己弁護の羅列だ。
俺は黙って灰皿を引き寄せた。
言葉を重ねれば重ねるほど、男の輪郭はぼやけ、
ただの「声」という名のノイズに変わっていく。
中身のない自意識が、店内のジャズを汚している。
「聞いてるのか? 俺の話は、これからの時代に……」
遮るように、俺は重いグラスを置いた。
氷がぶつかり、乾いた音が響く。
それが、この一方的な対話における唯一の句読点だ。
男は自分の言葉に酔い、鏡に映る自分に惚れ惚れとしている。
その瞳には、目の前の俺も、この街の現実も映っていない。
ただ、自分が作り上げた肥大な幻影だけが、そこにある。
「勘定だ」
俺は短く告げた。
能書きで腹が膨れるなら、この街に飢えなんて存在しない。
だが、現実はいつだって残酷なまでに寡黙だ。
奴が去った後の椅子には、湿った自己主張の残骸だけが落ちていた。
俺はそれを丁寧な手つきで掃き出し、
誰の物語にも属さない、静かな闇を買い戻した。


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