帰ってきた雨の港

日記

錆びついたクレーンが、重い空を吊り上げている。
数年ぶりのこの街は、安物のウイスキーと同じ、ひどく喉に障る味がした。
埠頭を叩く雨音は、誰かの言い訳のように執拗で、
撥ね上げた水飛沫が、磨き忘れた靴を汚していく。
俺を待っていたのは、歓迎の言葉じゃない。
コンクリートに染み込んだ、消えない過去の記憶だけだ。
コートの襟を立て、火のつかないライターを弾く。
湿った風が、ポケットの中の孤独を冷たく撫でた。
波止場に揺れる灯台の火は、
かつて見失った、あいつの眼差しに似ていて、
俺は反射的に、視線を足元の泥水へ落とした。
「変わらねえな、この港も」
独り言は、波の音にかき消される。
船の汽笛が、古い傷口を抉るように、遠くで一度だけ鳴った。
俺は再び歩き出す。
雨のカーテンの向こう、まだ明かりの消えない酒場を目指して。
そこには、答えなんてないだろう。
だが、この雨を凌ぐための、一杯の琥珀色ならあるはずだ。


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