眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

帰ってきた雨の港2

日記

錆びついた錨(いかり)が、泥濘(ぬかるみ)に沈んでいる。
十年ぶりのこの街は、安物のバーボンのように喉を焼く。
埠頭のクレーンは、巨大な骸骨のように立ち尽くし、
降りしきる雨は、消し忘れた過去のしみを洗おうとしていた。
トレンチコートの襟を立て、
マッチを擦る。
湿った海風が、一瞬の火花を冷たく嘲笑った。
あいつの声も、波の音に飲み込まれて久しい。
約束など、この防波堤に砕ける飛沫(しぶき)よりも脆いものだ。
足元の水たまりに、街灯の鈍い光が浮いている。
それを踏みつけ、俺は影の中へと歩き出す。
帰ってきたのではない。
ただ、行き止まりの先にここがあっただけだ。
港は黙っている。
雨だけが、終わりのない物語を語り続けていた。


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