眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

錆びた航跡

日記

タラップを上がり、鉄の甲板に立つ。
重いドラの音が、胸の奥の空洞を震わせた。
船がゆっくりと岸壁を離れる。
雨のカーテン越しに、防波堤に佇む小さな影が揺れていた。
彼女の姿が、一歩、また一歩と遠ざかる。
伸ばされたままのその手は、もはや雨粒を掴むことしかできない。
俺は胸ポケットから、火のつかない煙草を取り出し、唇に挟んだ。
濡れたフィルターから、苦い塩の味が染み出す。
「……あばよ。それだけで十分だ」
海風が容赦なく叩きつける。
船尾が描く白い泡の道が、過去をかき混ぜ、深い闇へと沈めていく。
街の灯りは、やがて一筋の線になり、
そして、降りしきる雨の向こうへと完全に溶け去った。
俺は一度だけ海に向かって煙草を投げ捨て、
二度と振り返ることなく、船室へと続く重い鉄の扉を押し開けた。


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