眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

父の落日

ココロとカラダ

父が、小さくなった。
それは物理的な寸法の問題ではなく、
魂の在庫が、底をつきかけているのだ。
「めしは、まだか」
一日に十度も繰り返されるその問いに、
僕はそのたび、はじめて聞くような顔をして、
「さっき食べたばかりじゃないか」と、
おどけた絶望を演じてみせる。
かつて、この男は僕にとっての峻厳な山であった。
いまや、その山は崩れ、
湿った粘土の塊となって、僕の膝に凭れかかっている。
僕は、それを疎ましく思い、
同時に、その重みの中に、
かつて僕が父に求めて得られなかった、
「無垢な甘え」の完成形を見てしまうのだ。
ああ、介護とは、
復讐の形を借りた、究極の親孝行ではないか。
排泄の世話をしながら、僕は心の中で、
「ざまあみろ、大好きだよ」と、
道化の独白を呟く。
夜、父の寝息を聞きながら、
僕は自分の手のひらを見つめる。
そこには、老いという名の、
逃げ場のない、しかしどこか甘美な、
一族の呪いが刻まれている。
明日もまた、僕は嘘をつくだろう。
「お父さん、明日はいい天気だよ」
本当は、土砂降りの孤独が、
すぐそこまで来ているというのに。


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