鋼鉄のナルシス2
鏡の中のそいつは、プロテインの粉末で肺を汚している。
安物のバーボンより、鶏のささみの茹で汁を愛する男。
鋼の鎧を纏ったつもりだろうが、俺に言わせれば、
それはただの、脱げなくなった重すぎる着ぐるみだ。
安物のバーボンより、鶏のささみの茹で汁を愛する男。
鋼の鎧を纏ったつもりだろうが、俺に言わせれば、
それはただの、脱げなくなった重すぎる着ぐるみだ。
「昨日のデッドリフトがさ……」
聞き飽きた。
お前の背筋がどれだけ唸ろうが、
この街の湿った夜風は、1ミリも動かせやしない。
聞き飽きた。
お前の背筋がどれだけ唸ろうが、
この街の湿った夜風は、1ミリも動かせやしない。
血管の浮き出た前腕を見せつけ、
奴は今日も、存在しない敵と戦っている。
鏡の自分に恋い焦がれ、
重力という名の恋人に、何度も背中を丸めて。
奴は今日も、存在しない敵と戦っている。
鏡の自分に恋い焦がれ、
重力という名の恋人に、何度も背中を丸めて。
笑わせるな。
真に重いものは、ダンベルじゃなく、
その膨れ上がった自尊心の方だ。
奴が鏡の前でポーズを決めるたび、
酒場の空気は薄くなる。
バルクアップした筋肉の隙間に、
一欠片の「哀愁」を詰め込むスペースさえ、もう残っちゃいない。
酒場の空気は薄くなる。
バルクアップした筋肉の隙間に、
一欠片の「哀愁」を詰め込むスペースさえ、もう残っちゃいない。