眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

嘘の泉

ココロとカラダ

 ああ、神様。あなたは本当に、意地が悪い。
 ピレネーの麓だか何だか知りませんが、こんな遠いところまで、わざわざ恥を晒しにやって来る人間の身にもなっていただきたいのです。
 ルルド。そこには病を治す不思議な水が湧いているのだと、誰かが書いた古ぼけた雑誌の端に書いてありました。私はそれを、鼻で笑いました。奇跡? 救い? そんな甘ったるい言葉は、上等な砂糖菓子と一緒に、幸福な家庭の茶の間にでも置いてくるがいい。私のような、生まれながらの紛い物には、縁のない代物です。
 けれども、気がつけば私は、ずぶ濡れのコートを引き摺りながら、その洞窟の前に立っていたのです。
 滑稽ではありませんか。無神論者を気取って、酒と女と嘘の中に身を隠していた男が、最後には泥を掘り返した少女の「お告げ」に縋ろうとしている。死ぬ勇気もないくせに、生きる資格だけを欲しがっている。
「ここには、何もありませんよ」
 そう自分に言い聞かせながら、私は震える手でその水を掬いました。
 水は、恐ろしいほどに透き通っていました。私の、濁りきった卑屈な面構えを、無遠慮に映し出すほどに。
 一口、喉を通したところで、何かが変わるわけではありません。肺病が消えるわけでも、借金がなくなるわけでも、ましてや私の書き散らした恥ずべき原稿が、珠玉の名作に変わるはずもない。
 ただ、そのあまりの冷たさに、私は少しだけ泣きたくなった。
 奇跡なんて、起こらなくていい。
 ただ、この冷たい水が、私の喉を焼く酒精の毒を、一瞬だけ忘れさせてくれれば、それでいいのです。
 聖母様。もしもあなたが本当にそこにいるのなら、どうか、私を見ないでください。
 私は、救われるのさえ、恥ずかしいのです。


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