霧の墓標

日記

夜が明けきらぬ埠頭は
冷えたコーヒーのように苦い
白く濁った朝もやの向こう
見えない巨獣が吠えた
——汽笛だ。
湿った風がコートの襟を叩く
消えかけた街灯の下
昨日の嘘を海へ投げ捨てたが
波の音は何も許してはくれない
鉄錆の匂いと
誰かが残した安煙草の残り香
世界が目覚める前の
この空白の時間だけが
俺の正体を黙秘してくれる
また一発、汽笛が鳴る
それは見送りの合図か
それとも 追い立てる警笛か
答えは霧の中にしかない
俺は火のつかないライターをポケットに捻じ込み
音のする方へと
ゆっくりと踵を返した_


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