琥珀の残り火

日記

朝もやを切り裂く汽笛は
古いレコードの針飛びに似ていた
路地裏の二階、看板の消えたJAZZ喫茶
スピーカーからは
コルトレーンの咆哮が埃と共に舞い上がる
昭和という名の重たいコートを
俺たちはいつまで脱げずにいるのか
カウンターに残された琥珀色の指紋
氷の溶ける音だけが
饒舌に過去を語りだす
「あいつは、もう来ないよ」
ママが吐き出した紫煙が
蓄音機のラッパに吸い込まれて消えた
壁のカレンダーは十年前で止まり
セロニアス・モンクの不協和音が
ひび割れた窓ガラスを震わせる
外では、二発目の汽笛が鳴った
それは過去を断ち切る音か
それとも 逃れられないリズムへの招待か
俺は最後の一口を飲み干し
レジ横の招き猫に軽く指をかけ
霧で煙る街の低音(ベース)の中へ
再び身を沈めた_


#日記広場:日記