混血(ミックス)のシルエット

日記

三発目の汽笛が、埠頭の静寂を切り裂いた
もやの中から浮かび上がったのは
彫りの深い、硝子細工のような横顔だ
彼女は東洋の静寂と
西洋の激情をその瞳に宿していた
濡れたトレンチコートを纏い
霧を吸い込んだサックスのように
少しかすれた声で、彼女は呟く
「この船に乗れば、昨日は消えるのかしら」
差し出した俺のライターに
彼女が細い指を添える
火が灯った一瞬、照らし出されたのは
かつて俺が追っていた
あのジャズ・クラブの闇よりも深い、彼女の過去だ
父親から受け継いだ異国の青い瞳と
母親から譲り受けた漆黒の髪
その境界線(ボーダー)に、彼女は立っている
汽笛はもう、迷いを許さない
「地獄の端までなら、付き合うぜ」
俺の言葉に、彼女は微かに唇を歪めた
それは微笑みか、それとも哀別か
二人の影は、ジャズの即興演奏のように
朝もやの奥へと、もつれ合いながら溶けていった_


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