琥珀色の終止符2

日記

カウンターの端、氷が溶ける音。
それは、この街が吐き出す唯一の溜息だ。
琥珀色の液体に沈めた記憶を、
錆びたキーを叩く音が、無遠慮に呼び戻す。
隣に座ったのは、訳ありの沈黙。
誰もが何かを演じ、誰もが何かを失っている。
グラスに残る指紋と、
タイプライターが刻むインクの染み。
どちらがより、真実に近いのか。
マスター、もう一杯。
氷は少なめで、絶望は多めがいい。
ガタつくテーブルの上で、
レミントンは、古い友人のように咳き込む。
一行書き進めるたびに、
背後のドアが開く予感に、背筋が凍る。
ここは、物語が死ににくる場所。
書き上げた原稿を、灰皿の中で燃やすまで。
夜が明けるのを、
錆びた鉄の音だけが、待ち続けている。


#日記広場:日記