灰色の夜明け3

日記

グラスの底に張り付いたレモンと、
最後の一行。
タイプライターは、ようやくその重い口を閉ざした。
「カチャン」という乾いた終止符が、
空っぽの店内に、寂しく響き渡る。
ブラインドの隙間から、
剃刀のような朝の光が差し込む。
それは昨夜の嘘を暴き、
酒の魔法を、容赦なく現実へと引き戻す。
錆びた鉄の臭いと、冷めたコーヒー。
書き上げた原稿をポケットにねじ込み、
俺は椅子の背からコートを掴み取る。
夜が明ける。
この街の罪を、白々しい光が塗りつぶしていく。
だが、指先に残ったインクの黒さだけは、
まだ、俺がここにいた証明を刻んでいた。
扉を押し開ければ、
冷たい空気が、肺の奥まで突き刺さる。
さあ、新しい絶望の始まりだ。


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