真夜中の錆びた錨
港の霧は、安物のバーボンのように喉に刺さる。
路地裏のスピーカーが吐き出すのは、セロニアス・モンクの気だるい旋律。
「ラウンド・ミッドナイト」——。
それは、昨日を捨てきれない男たちのための葬送曲だ。
路地裏のスピーカーが吐き出すのは、セロニアス・モンクの気だるい旋律。
「ラウンド・ミッドナイト」——。
それは、昨日を捨てきれない男たちのための葬送曲だ。
ガントリークレーンが、重い沈黙を吊り上げている。
波止場に打ち寄せる黒い水面は、
誰かの嘘を飲み込んだまま、何も語ろうとはしない。
波止場に打ち寄せる黒い水面は、
誰かの嘘を飲み込んだまま、何も語ろうとはしない。
トレンチコートの襟を立て、
俺は最後の一本に火をつけた。
紫煙がジャズの音符に絡みつき、
午前零時の静寂に、かすかな亀裂を入れる。
俺は最後の一本に火をつけた。
紫煙がジャズの音符に絡みつき、
午前零時の静寂に、かすかな亀裂を入れる。
女の香水の残り香か、それとも潮騒の悪戯か。
この街じゃ、思い出も錆びた錨と同じだ。
一度沈めれば、二度と浮き上がってこない。
この街じゃ、思い出も錆びた錨と同じだ。
一度沈めれば、二度と浮き上がってこない。
ピアノの低音が、アスファルトを叩く雨と重なる。
「さよなら」を言うには、もう遅すぎる。
「おやすみ」を言うには、まだこの夜は若すぎる。
「さよなら」を言うには、もう遅すぎる。
「おやすみ」を言うには、まだこの夜は若すぎる。
俺はただ、影を連れて歩き出す。
ミッドナイト——。
この曲が終わる頃には、
俺もこの街の、ありふれた風景の一部になる。
ミッドナイト——。
この曲が終わる頃には、
俺もこの街の、ありふれた風景の一部になる。