潮騒のリフレイン

日記

波止場のダイナーの角、
スピーカーから漏れるのはニーナの掠れた独白。
ピアノの鍵盤が、夜の帳(とばり)を一枚ずつ剥いでいく。
街は潮風に洗われ、
湿ったアスファルトが街灯を鈍く反射する。
俺の火をつけたタバコの煙は、
行き場を失くしたカモメのように宙を彷徨った。
「運命なんてものは、安酒の氷みたいなもんさ」
独りごちて飲み干したバーボンの苦味。
ニーナが歌う愛の不在が、
古傷のように疼きだす。
コンクリートの隙間に沈む、
誰も語らなくなった過去の断片。
潮騒がすべてを攫(さら)っていくまで、
この街の静寂(しじま)に身を委ねるだけだ。
夜はまだ、
重たいブルースを奏で続けている。


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