乾いた喉と、空虚な理

人生

薄暗いカウンターの端で
奴は「一切皆苦」と宣う
琥珀色の液体に、救いなど一滴も入っていないのに。
口を開けば「縁起」がどうの、
耳に馴染んだ「空」の教えを、
煙草の煙と一緒に吐き出す。
だが、その煙が消える速さこそが
俺たちの知っている唯一の現実だ。
「執着を断て」と奴は説く
だが、使い古されたコートの襟を立て
冷たい風を凌ぐとき
残るのは悟りではなく、ただの体温の記憶だ。
小洒落た「法灯」を掲げるのは勝手だが
俺の道は、この夜の闇だけで足りている
「解脱」なんて高尚な出口は、
この街の裏路地にはどこにも繋がっちゃいない。
次に「不二」を語りたくなったら
鏡の中の自分にでも話しかけるんだな。
俺は代金を置き、椅子を引く
奴の「円融」な理屈が、氷の音に溶けて消える前に_。


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