饒舌な死体

日記

奴の口から溢れ出すのは
「存在論的」な欠落と、「範疇(カテゴリー)」違いの愚痴。
耳を貸す価値もない。
ドブ川に流れる生ゴミの方が、まだ生活の匂いがする。
「現象学的」に俺を見つめるのは勝手だが、
その薄っぺらな視線が、俺の皮膚に届くことはない。
お前の「ロゴス(理性)」がどれほど精緻でも
目の前の勘定書き一枚、書き換える力もありはしない。
「主体」がどうとか、「他者」がどうとか
ご立派な言葉の城に引きこもっていろ。
俺にとっての他者は、
肩を掠めていく風と、この苦いコーヒーだけで十分だ。
「実存」を証明したいなら、勝手に叫んでいればいい。
だが、その声はこの店の壁さえ越えられない。
お前は言葉を積み上げているつもりだろうが
俺には、自分の墓穴を掘っている音にしか聞こえないんだ。
「ニヒリズム」を気取るには、お前の肌はまだ綺麗すぎる。
これ以上、耳を汚されるのは御免だ。
俺は一瞥もくれず、夜の帳(とばり)へと踏み出す。
後に残ったのは、名前も持たない虚無と
言葉の重みで窒息しかけている、憐れな男の残骸だけだ。


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