眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

遠い追憶

日記

風が吹くたび、庭の平穏が少しずつ剥がれ落ちていく。
土の上に散らばった赤い花弁は、
まるで、誰かがそこに置き忘れていった未練の欠片だ。
「いい引き際だ」
そう呟いてみたが、喉の奥に苦い後味だけが残る。
命の盛りを駆け抜け、音もなく散っていくその赤が、
かつて隣にいた、母の生き様と重なった。
強引なまでの情熱と、不器用な優しさ。
触れれば傷つくと分かっていても、手を伸ばさずにはいられなかった。
母がいなくなったあとの世界は、
色を失った古いフィルムのように、ひどく寒々としている。
散った花びらは、やがて土に溶けて消えるだろう。
だが、網膜に焼き付いたその「熱」までは消せやしない。
グラスに注いだ酒を、乾いた土に一滴だけ落とす。
「さようなら」
五月の夜風が、最期の赤い一片(ひとひら)を、
暗闇の向こう側へと連れ去っていった。_


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