眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

皐月の港、あるいは追憶の灯

小説/詩

五月の風は 塩の香りをはこんで
坂道をのぼり この静かな丘にたどりつく
白い十字架のむこう ひろがる港には
名も知らぬ船たちが わかれの汽笛をひびかせ
空の青に かすかな亀裂をのこしていく
わたしは 錆びた鉄柵に手をかけ
遠い異国の名が刻まれた 石の肌をみつめる
かつてここで 誰かが抱いた郷愁(ノスタルジア)は
いまや わか葉のささやきに紛れ
わたしの孤独を ひっそりと包みこむ
ああ あの日 あなたと見たガス灯は
いまもまだ あの場所に立っているだろうか
昼の光のなかでは ただの鉄の柱にすぎないけれど
わたしの心のなかでは いまもなお
蒼ざめた やさしい火を灯しつづけている
忘れたはずの あなたの声が
波の音にまじって 不意に耳をかすめる
けれど ふりむけば そこにはただ
まぶしすぎる陽光(ひかり)と 揺れる草原があるばかり
……すべては 皐月の夢のなかの出来事だ
やがて夜がきて 街に灯がともれば
あのガス灯も ゆらゆらと 過去を照らしだすだろう
帰るべき場所をもたない わたしの心のように
この丘の上で 海を見守りながら
いつまでも いつまでも ひとり立ちつくして_


#日記広場:小説/詩