眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

5月の帳

日記

5月の港に、不似合いな霧が立ち込めている。
汗ばむ陽気はどこへ行った。この霧は、夜の泥酔を洗い流そうとする朝の冷気ではない。もっと粘り気のある、昨日からの溜息だ。
私はトレンチコートの襟を立て、ジッポの炎で煙草に火をつけた。
安物のバーボンより、この霧の味の方が幾分かましだ。遠くで霧笛が鳴る。重く、鈍い、誰かの死を告げるような音。
桟橋の先は、白い虚無に呑み込まれていた。
船は動かない。約束も、おそらくは動かないだろう。
私の顔に、霧が冷たい指先で触れてくる。それは「逃げろ」と囁いているようでもあり、「ここにとどまれ」と命じているようでもあった。
どちらでもいい。
煙草が指に近づく。私はそれを霧の中に投げ捨てた。
白く濁った世界の中で、ただひとつ、私の意志だけが、確かな重みを持ってそこに在った。
5月の霧は、私の孤独を隠してはくれない。
ただ、静かに、それを濡らしていくだけだ。____


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