眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

5月の幻影

日記

カレンダーはまだ5月を指している。
しかし、アスファルトが吐き出す熱気は、
すでに手遅れな夏の到来を告げていた。
フレンチ・ローストの苦い風が、
ネクタイを緩めた首筋を執拗に撫でまわす。
季節の変わり目という奴は、
いつも予告なしに、泥棒のようにやってくる。
氷の溶けかけたグラスの向こう、
陽炎のなかに歪む、見慣れた街並み。
人類がまだ冬の記憶を懐かしんでいる間に、
太陽は容赦なく、次の獲物を値踏みしている。
「まだ早い」と、誰かが呟いた。
だが、世界はとうに、俺の都合など置き去りにしている。
汗がシャツに滲む。
この早すぎる暑さも、じきに日常という名の、
退屈なスープに変わるのだろう。
煙草の煙が、熱い大気に溶けて消えた。
俺はただ、次の夜が運んでくる、
かすかな冷気を待つだけだ。


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