眠りの森 〜言葉の雫〜

眠

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

五月の小川に寄せて

小説/詩

Ⅰ
光は こぼれる雲のすきまから
みどりの若葉の あわい手のひらに
ぼくらはそこへ ゆかうとしていた
まだだれも知らない 四月のあの森へ
いまや季節は 五月のあかるい扉をひらき
森の奥深く 光のしづくをあつめてゐる
おまへがそっと 指さしたその先に
青いまたたきを交はす 小さな小川のせせらぎ
Ⅱ
さらさらと 水はあや取りを編むやうに
しろい雲の影を ひそやかに運んでゆく
ぼくらは洗はれた まぶしい石のうへに
腰をおろして ただだまって聞いてゐた
そよ風がひとしきり 梢(こずえ)をゆらせば
見えない小鳥の うたふ声がひびく
おまへは小さな日傘を かたむけながら
せせらぎの歌に じっと耳をすます
Ⅲ
夢みたものは あかるい風のゆくへ
ねがったものは ひとつのやさしい約束
すべては木漏れ日の きらめきのなかに
淡い水彩のやうに にじんでいる
だが ぼくらはもう引き返さねばならない
水のひびきが 遠ざかるあの場所から
さようなら 五月のひかりに濡れていた森よ
小川は今日も おまへの面影をうつしている


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