眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

五月の小川に寄せて

小説/詩


光は こぼれる雲のすきまから
みどりの若葉の あわい手のひらに
ぼくらはそこへ ゆかうとしていた
まだだれも知らない 四月のあの森へ
いまや季節は 五月のあかるい扉をひらき
森の奥深く 光のしづくをあつめてゐる
おまへがそっと 指さしたその先に
青いまたたきを交はす 小さな小川のせせらぎ

さらさらと 水はあや取りを編むやうに
しろい雲の影を ひそやかに運んでゆく
ぼくらは洗はれた まぶしい石のうへに
腰をおろして ただだまって聞いてゐた
そよ風がひとしきり 梢(こずえ)をゆらせば
見えない小鳥の うたふ声がひびく
おまへは小さな日傘を かたむけながら
せせらぎの歌に じっと耳をすます

夢みたものは あかるい風のゆくへ
ねがったものは ひとつのやさしい約束
すべては木漏れ日の きらめきのなかに
淡い水彩のやうに にじんでいる
だが ぼくらはもう引き返さねばならない
水のひびきが 遠ざかるあの場所から
さようなら 五月のひかりに濡れていた森よ
小川は今日も おまへの面影をうつしている


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