安物の錆
午前二時、ネオンの墓場。
男は氷の溶けたグラスを指で弄(いじ)り、
世界の不条理を、安物の煙草とともに吐き出す。
「誰も俺を分かっちゃいない」
聞き飽きたブルースのフレーズ、今夜で何度目だ。
男は氷の溶けたグラスを指で弄(いじ)り、
世界の不条理を、安物の煙草とともに吐き出す。
「誰も俺を分かっちゃいない」
聞き飽きたブルースのフレーズ、今夜で何度目だ。
男の言葉は、まるで手入れを忘れたリボルバー。
引き金を引いても火を噴かず、
ただ、湿った火薬の匂いだけを部屋に充満させる。
上司の無能、社会の歪み、消えた女の薄情さ。
すべてを弾丸(たまねぎ)のように刻み、スープに沈めていく。
引き金を引いても火を噴かず、
ただ、湿った火薬の匂いだけを部屋に充満させる。
上司の無能、社会の歪み、消えた女の薄情さ。
すべてを弾丸(たまねぎ)のように刻み、スープに沈めていく。
「なあ、お前もそう思うだろう?」
濁った瞳が、こちらの沈黙を値踏みする。
傷口はバーボンで消毒し、一人で黙って縫い合わせるも
だが男は、かさぶたを剥がしては、
他人の前に並べて見せる、哀れな見世物小屋の主人。
濁った瞳が、こちらの沈黙を値踏みする。
傷口はバーボンで消毒し、一人で黙って縫い合わせるも
だが男は、かさぶたを剥がしては、
他人の前に並べて見せる、哀れな見世物小屋の主人。
夜が明ければ、また乾いた日常が始まる。
男はコートの襟を立て、
戦場へ向かう兵士の顔で、満員電車に消えていく。
背中に背負った、誰のものでもない
重たい「被害者の椅子」を引きずりながら。
男はコートの襟を立て、
戦場へ向かう兵士の顔で、満員電車に消えていく。
背中に背負った、誰のものでもない
重たい「被害者の椅子」を引きずりながら。
言葉の引き金を引くのは簡単だ。
だが、その硝煙で本当に胸を焦がしているのか?
男よ、愚痴という名の弾丸を撃ち尽くしたなら、
次は自分の足元を、撃ち抜いてみせるがいい。
だが、その硝煙で本当に胸を焦がしているのか?
男よ、愚痴という名の弾丸を撃ち尽くしたなら、
次は自分の足元を、撃ち抜いてみせるがいい。