眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

灰のシナリオ

ココロとカラダ

午前五時、ネオンがただの着色汚れに変わる頃。
ダイナーのテーブルに残されたのは、
冷めきった泥のようなコーヒーと、二人の擦り切れた人生だ。
「親があの時、選択を誤らなければ」
男は乾いた指先で、テーブルの傷をなぞる。
「社会が私を正しく評価していれば」
女はひび割れた爪を見つめ、声の出ない喉を鳴らす。
彼らの言葉に、もう誰も傷つきはしない。
かつては周囲を不快にさせた刃(やいば)も、
今や研ぐことを忘れ、己の肉に深く食い込むだけの鈍器となった。
すべての不運を他人のせいにし続けた結果、
彼らの手元には、自分の名前が書かれた白紙の履歴書しか残されていない。
言い訳という名の安価な酒に溺れ、
「いつか見返してやる」という幻影だけを育ててきた。
だが、時間は残酷な裁判官だ。
何もしなかった者には、何もない結末だけを淡々と宣告する。
「どこへ行けば、やり直せるんだろうな」
男の呟きに、女は答えない。
職を追われ、頼るべき血縁の重い扉も閉ざされた。
彼らが寄り添っていたのは絆ではなく、
「私は悪くない」という、互いの甘えの確認作業に過ぎなかったからだ。
差し込む朝日は、劇場の照明のように冷徹だ。
スポットライトが照らし出したのは、
悲劇の主人公ではなく、舞台に上がる前に老いさらばえた二人の敗者。
男は静かに席を立ち、人混みという名の無色の海へ沈んでいく。
女は開かないスマートフォンの画面に、自分の歪んだ顔を見て立ち尽くす。
彼らは何一つ失っていない。
最初から、何一つ持っていなかったのだから。


#日記広場:ココロとカラダ