言霊の罠
ある曇った秋の日の暮方である。一人の男が、雨やみを待つやうに、自らの言葉のゆくえを眺めていた。
そもそも「言霊」などといふものは、多分に怪しげな、あるいは哀れな、人間の錯覚にすぎない。言葉に魂が宿るのではない。人間が言葉といふ頼りない器に、己の肥大した自尊心や、見窄らしい欲望を無理に詰め込んでいるだけである。
男はかつて、美しい言葉を幾つも口にした。「正義」「愛」「高潔」。それらを発する時、男の胸はあたかも聖者のやうな満足感で満たされた。しかし、その言葉の裏側を覗いてみれば、そこにあるのは常に、他者より優位に立ちたいといふ、醜い利己主義の毒汁ばかりであった。言葉は、男が自己の醜悪さを隠すための、いささか巧妙すぎる仮面にすぎなかったのだ。
ところがある夜、男は街の片隅で、今にも飢え死にしさうな子供を見かけた。
男はいつものやうに、偽善の言葉をかけようとした。しかし、その時、喉の奥で言葉が凍りついた。どんな美しい言葉も、その場しのぎの嘘にしか思えなかったからである。
男はいつものやうに、偽善の言葉をかけようとした。しかし、その時、喉の奥で言葉が凍りついた。どんな美しい言葉も、その場しのぎの嘘にしか思えなかったからである。
男は黙って、自分の懐(ふころ)から最後のパンを差し出した。
言葉は何もなかった。ただ、パンを渡す男の指先が、かすかに震えていた。
言葉は何もなかった。ただ、パンを渡す男の指先が、かすかに震えていた。
その時、男の脳裏に、妙な確信がひらめいた。
言葉を失ったその沈黙の瞬間にこそ、皮肉にも、本当の「言霊」が宿ったのではないか。人間は言葉を操るのではない。言葉に見捨てられた時、はじめてその魂の在り処(ありか)を知るのである。
言葉を失ったその沈黙の瞬間にこそ、皮肉にも、本当の「言霊」が宿ったのではないか。人間は言葉を操るのではない。言葉に見捨てられた時、はじめてその魂の在り処(ありか)を知るのである。
男は苦笑した。この自嘲的な悟りすらも、また新しい言葉の罠にすぎないことを、彼は誰よりもよく知っていたからである。_
小町
2026/06/10 17:36:50
> 眠さん
関係のない話題
サッカーのワールドカップが始まるので、NHK BSプレミアムで全試合観る予定です(録画がメインですけどw)
今日は最近録画してた「映像の世紀バタフライエフェクト」を3本観ました←独り言ですみません(^-^;
小町
2026/06/10 17:27:54
> 眠さん
「言霊(ことだま)」についてのおはなし、どうもありがとうございます_(._.)_ ^^
言霊の古代からの歴史・信仰などについて全く知らなかったので、とても嬉しく拝読しました
ご教示どうもありがとうございます!
自分の内にある泉からすくい上げる気持ちを持ち続けたいと思います
眠
2026/06/10 10:37:12
> 小町さん
「言霊(ことだま)」とは、言葉に宿る不思議な力のことです。古代の日本では、口から発した言葉通りの現実を引き寄せる力があると信じられていました
風が野を吹き抜けるように心に浮かんだ想いをあなたはそっと唇から放つ
言の葉は、ただの音ではない天と地を結ぶ見えない糸であり未来の景色を描く絵筆である口にした「ありがとう」は胸の中に温かな光を灯し明日を照らす道しるべとなるもし「できない」と呟くならそれは自ら扉を閉ざす鍵となり「できる」と声に出すならばそれは新しい扉を開く鍵となる言葉は、もう一人のあなた自身今日、どんな種を蒔くだろう愛を語れば愛が実り希望を紡げば希望が舞い降りるだから、今日という日を信じて清らかで美しい言葉をあなたの命の泉から、そっとすくい上げよう_
眠
2026/06/10 10:20:37
> 小町さん
コメコメ(๑ ॣ•͈ٮ•͈ ॣ)♡アリガトゥ
小町
2026/06/10 05:28:06
「言霊」は誰かが善でありたいという願いを全否定するものではないとおもいたい
美しい利他的な行為でさえどこかしら不完全でしょう
言葉の罠ばかりの世の中ですが、ほんの少し希望をもっていたいものです