眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

晩期(梅雨のあしおと)

日記

「幸福(しあはせ)のあつまる場所を、人は終着駅と呼ぶのださうです。
しかし、そこへ行き着くための切符を、私はいつのまにか失くしてしまいました。
気がつけば、私のまわりには、ただ鬱陶しい梅雨の雨と、
行き場のない、みつともない涙の雫があるばかり。
いまさら、誰を恨むわけでもありません。
これは、ただの愚かな男の、夕闇のつぶやきでございます――。」




ああ、またしても鬱陶(うつたう)しい雨の季節が始まるのだ
夕闇のなか、あぢさいの花ばかりが妙に艶(つや)かしく
私はただ、自身のくだらない傷口を眺めるやうに
窓にこびりつく、みつともない涙の雫を数へてゐる
遠くで、寂しげな汽笛の音がひとつ、私を嘲笑(わら)ふ
「お前はどこへも行けないのだ」と、その音は云ふ
さうだ、私は終着駅に置き去りにされた、ただの道忘草(みちわすれぐさ)
生きていることが、もうそれだけで、たまらなく恥づかしい
どうせあなたも、私を嘘つきだとおもひ出すのだらう
風のやうな優しい言葉で、私を騙してくれればよかつたのに
梅雨の夜のつめたい闇は、容赦なく私を窒息させる
いっそ、このまま消えてしまへたら、どんなに楽だらう
点したばかりの薄暗いランプを、私はわざと吹き消して
暗闇のなか、ひとり声をあげずに、ただ、冷たい涙に咽んでいる_


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