眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

眩景のなかに

小説/詩

 

その一
はるに近い あかるい夏日の夕暮れ
なみは 無数の宝石のやうにひかる
まぶしすぎる光の つめたい海のうえに
一本のけむりが 白くのびている
ゆくえを忘れた鳥が 一羽だけ
きらめく波のまにまに 消えさらうとしている
さびしい心は なにもいはずに
ただ あおい風のゆくすえを追ふ
そこへ ひと声の汽笛がひびいた
光をひき裂くやうな 高いいろのひびきだつた
むかしこぼれおちた すべての時間が
ひかりのなかに よみがへる
汽笛は鳴る わたしの耳のそばで
けれど もうなにも戻らない
その二
夕日は しづかに海の底へ沈み
宝石のやうな波も やがてあたたかい影に包まれる
心も あのあかるい闇のやうに
しづかに 頽(くず)れてゆくだらうか
窓をひらけば なまぬるい海のにおひ
遠い汽笛は まだ鳴りやまない
すぎていつた季節(とき)の
わすれられた なきがらのやうに
わたしは 待つている
もうだれも こない夜の波止場で
ひかる波の記憶だけが 暗闇にのこるのをみつめながら
汽笛は鳴る かすかな余韻をのこして
心に 夜がそつとおりてくる
すべては 二度と目覚めぬ夢のやうに


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