ダイナー・ブルースは波に消える
ネオンの文字が、いくつか死んでいる。
「D I N E R」の文字だけが、潮風に震えながら赤い光を放っていた。
窓の外は、真っ暗な太平洋だ。
打ち寄せる波の音が、重低音のドラムのように足元を揺らしている。
「D I N E R」の文字だけが、潮風に震えながら赤い光を放っていた。
窓の外は、真っ暗な太平洋だ。
打ち寄せる波の音が、重低音のドラムのように足元を揺らしている。
店内のジュークボックスから流れるのは、やはりジャック・ティーガーデンだ。
彼のトロンボーンは、まるで古い友人が肩を叩くように、優しく、そして容赦なく胸に染みる。
けだるいスライドの音が、錆びついたキッチンの匂いと混ざり合う。
彼のトロンボーンは、まるで古い友人が肩を叩くように、優しく、そして容赦なく胸に染みる。
けだるいスライドの音が、錆びついたキッチンの匂いと混ざり合う。
カウンターに置かれた、冷めかけた黒いコーヒー。
俺はそれに、懐から出した安物のウイスキーをひと垂らしした。
ダイナーの主人は、何も言わずに皿を拭き続けている。
彼もまた、この波の音とブルースに囚われた一人なのだろう。
俺はそれに、懐から出した安物のウイスキーをひと垂らしした。
ダイナーの主人は、何も言わずに皿を拭き続けている。
彼もまた、この波の音とブルースに囚われた一人なのだろう。
「あいつは、もう来ないよ」
主人がぽつりと言った。
俺はコーヒーをすする。苦みとアルコールが、喉を焼きながら落ちていく。
主人がぽつりと言った。
俺はコーヒーをすする。苦みとアルコールが、喉を焼きながら落ちていく。
ジャックの奏でる「セントルイス・ブルース」が、最後の長い音を響かせて止まった。
代わりに、ひときわ大きな波の音が店を包み込む。
俺はコートの襟を立て、席を立った。
まだ、潮風のなかを歩く理由が残っている。
代わりに、ひときわ大きな波の音が店を包み込む。
俺はコートの襟を立て、席を立った。
まだ、潮風のなかを歩く理由が残っている。