眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

セーヌの哀歌

日記

あわい葡萄色の夕暮が セーヌの川面を染めてゆく
春の嵐の名残りの風が 冷たく水を揺すぶるとき
僕は ただひとりの寂しい個影(かげ)となり
きみの来ない川辺の古本市(ブキニスト)の横にたたずむ
外套のポケットの奥 指先が触れる一通の未開封の手紙
きみが遺(のこ)した最後の言葉を 僕はまだ読むことができない
とほい街角から 風にのつて響いてくるオルガンの音は
あかるい寂しさを湛へた 僕たちのための鎮魂歌(レクイエム)
水面にひとつ、またひとつ ガス燈のあかりが滲むころ
きみの魂が あじさい色の闇の彼方へ流れてゆくのがみえる
「さようなら」さえ言へずに 引き裂かれたあの春の日に
時間は止まり ただ濁流のやうな絶望だけが僕を包む
せき止めてゐた熱い涙が とうとう溢れて頬を伝ひ落つれば
僕はただ 暮れなづむ岸辺に ひとり泣き崩れるばかり


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