眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

折り鶴 ── 病み

小説/詩

I.翳(かげ)のなかで
あんなにも優しく青空がひろがつてゐるのに
風はなにごともなかつたかのように吹きすぎて
あかい千羽鶴のむれを ただ冷たくゆすぶる
ここはすべてのいのちが焼きつくされた場所
あの日から ぼくたちの時間はとまつたまま
ぼくのからだのなかに 深くねむる黒い血は
見えない毒のように しづかに蝕んでゆく
おそすぎる目覚めを ただじつと待ちながら
ちひさな祈りをおりこんだ紙のつばさは
行き場を失ひ ただ痛みのなかでふるへてゐる
II.断絶の庭
だれもがみな 忘れてゆくための季節のなかで
白い雲はながれ 草木はめぐり生ひ茂るけれど
ぼくのゆめは けつしてあの夏から逃れられない
崩れおちた煉瓦のすきまに沈む 昏い影
それはぼくの骨のなかにまで 深く滲んでゐる
つめたい指先で ただ折りつづけた折り鶴
だれを救ふためでもなく ただ零れおちる涙
かわらぬ蒼穹のした ぼくはひとり立ち尽くし
届かない祈りのむなしさに 胸を締めつけられ
声にならない叫びを 胸の奥に閉じ込めてゐる
III.消えゆくもの
はるかな闇のなかを あてもなく歩いてきた
ぼくが最後にうたふのは 絶望のうたにすぎない
それはけつして あしたへ届くことのない響き
ただ うつろなからだを擦り抜けてゆく風の音
ちひさな翼が 炎のなかへ落ちてゆくように
ぼくのたましいもまた 暗い土へと還るのだらう
もう光など見えない 冷えきつた朝のなかで
ぼくはただ 静かに消えゆく奇蹟をまつてゐる

──遠い教会の鐘の音が、ぼくの血のなかで鳴りひびいてゐる。
それはかつて街を焼き尽くした炎の記憶であり、
いまぼくの肉体をしづかに蝕む、あらかじめ定められた終焉の合図(あいづ)だ。
祈りはつひに天に届かず、ただあかい紙の翼だけが、
永遠の沈黙にむかつて零れおちてゆく──。


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