晩夏(ばんか)の貌
若くもないのに美貌が、残っている。
それは幸福ではなく、むしろ、神が回収し忘れた
酷な手土産のようで、私はただ、途方に暮れる。
それは幸福ではなく、むしろ、神が回収し忘れた
酷な手土産のようで、私はただ、途方に暮れる。
若さという免罪符は、とうに失くした。
それなのに、鏡のなかの顔だけが、
いまだに、かつての華やかな罪の匂いを放っている。
まるで、とっくに枯れたはずの庭園に、
一輪だけ、毒々しく咲き残った薔薇のように。
それなのに、鏡のなかの顔だけが、
いまだに、かつての華やかな罪の匂いを放っている。
まるで、とっくに枯れたはずの庭園に、
一輪だけ、毒々しく咲き残った薔薇のように。
街を歩けば、人は私を振り返る。
けれどその視線は、かつての賛美ではなく、
「まだ、あそこにいる」という、奇妙な怪物を見る目のようだ。
私はただ、老いてゆく肉体のなかで、
その整いすぎた骨格だけを、重い荷物のように引きずっている。
けれどその視線は、かつての賛美ではなく、
「まだ、あそこにいる」という、奇妙な怪物を見る目のようだ。
私はただ、老いてゆく肉体のなかで、
その整いすぎた骨格だけを、重い荷物のように引きずっている。
ああ、いっそのこと、すべてが醜く崩れてしまえばよかった。
そうすれば、私は大手を振って、
この世のどん底へ、喜んで転がり落ちていけたのに。
中途半端な美しさが、私をこのまともな世界に、
細い蜘蛛の糸で、かろうじて繋ぎ止めてしまう。
そうすれば、私は大手を振って、
この世のどん底へ、喜んで転がり落ちていけたのに。
中途半端な美しさが、私をこのまともな世界に、
細い蜘蛛の糸で、かろうじて繋ぎ止めてしまう。
「お若いですね」という言葉の裏にある、
哀れみと、かすかな嫉妬の棘。
私はその棘を、わざと胸の奥深くに突き刺して、
にやにやと、自嘲の笑みを浮かべるのだ。
哀れみと、かすかな嫉妬の棘。
私はその棘を、わざと胸の奥深くに突き刺して、
にやにやと、自嘲の笑みを浮かべるのだ。
神よ、引き取るなら、すべてを一度に持っていってくれ。
魂も、記憶も、そしてこの、
若さを失ってもなお、無駄に美しいままの、
忌まわしい仮面のような貌も。
魂も、記憶も、そしてこの、
若さを失ってもなお、無駄に美しいままの、
忌まわしい仮面のような貌も。
私はもう、この美しい檻のなかで、
これ以上、歳をとる芝居を続けるのには疲れてしまった。
これ以上、歳をとる芝居を続けるのには疲れてしまった。