眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

砂の砦、あるいは失われた歌へのソナチネ

小説/詩

I. 渚に咲くもの
風のとおるみちすじに ひそやかに
うす紅のともしびをともすものがある
白浜の かわいた砂のくぼみに
ハマヒルガオは かすかな記憶のようにひらかれていた
波のきれはしが たえずその足元を濡らし
洗いたてられた貝殻が 光をはね返している
おまえはそこに ひとつの影をおいて去った
まるで最初から 風のなかの幻であったかのように
耳をすませば あわい潮騒の階調(しらべ)のなかに
むかし聴いた ソナチネの終楽章がまじっている
けれどそれは もう誰の耳にもとどかない歌
去った季節の うしろ姿ばかりを追いかけて
わたしは今日も この渚をひとり歩いている
砂に埋もれてゆく あの日のはかない約束とともに


#日記広場:小説/詩