眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

灰色のパステルに寄せる挽歌

小説/詩

I. 閉ざされた窓
水色のパステルは いつしか涙に滲み
白浜のハマヒルガオは うつむいたまま動かない
おまえの去った渚には ただ冷たい砂だけが残り
わたしの個影を 夕闇のなかへ深く沈めてゆく
岬のすたれたホテルの けして開かない硝子窓
その向こうには もう誰もいない灰色の部屋がある
潮騒は 失われた季節の悔恨をくりかえし
寄せてはかえす波のきれはしで 心を切り裂く
あの日 窓辺で優しく鳴いていた小鳥は
いまは羽を濡らし どこか遠い空で凍えているのだろうか
呼びかけても かえってくるのは虚しい風の音ばかり
去ったものは二度と戻らず 記憶だけが疼(うず)いている
わたしはひとり 砂のうえに膝をつき
二度とひらかぬおまえの瞳の その深い翳(かげ)をみつめている_
II. 潮騒の葬列
薄緑の記憶さえも 波のあわいに消え去って
乾いた砂丘のうえに ぽつんと残されたわたしの影
ハマヒルガオの小さな花びらは まるで
破られた恋文のきれはしのように 寂しく散り急ぐ
おまえの指先がふれた あの窓の冷たさを
わたしは今も この凍えた両手に覚えている
小鳥の啼き声は もう歌ではなく悲鳴となり
鉛色の空のすきまへと 吸い込まれてゆく
海よ おまえはなぜそれほど残酷に寄せるのか
なにもかもを奪い去り わたしを置き去りにしたそのあとで
この孤独の傷口を 白い泡でなぞるために
すべては夢であり そしてすべては失われた
夕映えが暗い紫へと 静かに融けてゆく渚で あわい潮騒のなかに その名前が消えてゆくのを聴いている_


#日記広場:小説/詩