眠りの森 〜言葉の雫〜

眠

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

河もにうつる夏の花火4

小説/詩

Ⅰ
だれも知らない草の葉の
そのかそけき囁きのひびく処で
ぼくらはそっと息をひそめてゐた
夕闇のなかに風がそよぎだすのを
遠い街のざわめきをよそに
ちひさな雲が夜の隅に迷ひこむ
きみの横顔はかすかに匂ひ
ぼくの心は千々に震へてゐた
そのとき 静かな水のおもてに
ひとつのひかりが零(こぼ)れ落ちた
それは音のない遠い花火の
かなしい追憶のはじまりのやうに
Ⅱ
あかいひかりが あをいひかりが
水面(みなも)を滑るやうにひろがっては
またたくまに闇へと還ってゆく
流れる雲の影のやうに はかなく
きみは何も言はずにただ見つめてゐた
ひらかれては消えゆくその花の影を
ぼくの手のひらを吹き抜ける風は
いつか失はれるものたちの冷たさをおぼえて
さやさやと鳴る夜の草むらのなか
ぼくらはここで何を待ってゐるのだらう
過ぎ去った日の あの一瞬のきらめきを
Ⅲ
もうすべては夜の底へと沈み
暗い河の水だけが ただ流れてゆく
ぼくらの秘密の場所には
冷たい風と 草の匂いだけがのこされて
いつかぼくがこの場所を忘れても
あのちぎれた雲のゆくえを忘れても
夏の夜の あの短いまたたきは
だれに告げることもなく そこにありつづける
さようなら ぼくのやさしい面影よ
風にちぎれて消えた あのあざやかな幻よ

空にひらいたひとつの輪が
静かな河もにもうひとつの輪をむかへる
二重の円(まどか)えがいたあの夏のまたたきを
ぼくは今も 窓辺の風のなかに夢みてゐる


#日記広場:小説/詩

  • 音.

    音.

    2026/07/12 20:44:01

    > 眠さん
                  (((*≧艸≦)ププッ

  • 眠

    眠

    2026/07/12 20:11:05

    > 音.さん
    ∩∩
    (。・x・)
    OuuO ⓣⓗⓐⓝⓚ ⓨⓞⓤ♪

  • 音.

    音.

    2026/07/12 18:59:51

    読みながら、記憶というものは不思議だなと思いました。

    そのときには何でもなかった風や匂いまで、
    あとになって心の奥から急に戻ってくることがあります。
    出来事そのものより、言えなかったことや、隣にいた人の気配のほうが長く残ることもあります。

    誰にも知られず、記録にも残らない時間でも、本人の中ではずっと消えない。
    そういうものが、その人の見方や生き方を、気づかないところで形づくっているのかもしれません。

    空に咲いた花火と、河面に映った花火。その二つが重なって見えるところが、とても好きでした。
    目の前にあったものは消えても、心に映ったものまでは消えないのですね。
    少し寂しくて、それでもどこか温かい詩でした。