眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

白浜の追憶

小説/詩

序文(まえがき)
ひとつの旅のやうに、私の心のなかの風景はうつろひ、そしてここに小さな手帳となって留まる。
はじめに白浜のひるすぎの、あのあかるい光のなかにたたずんでゐた一羽の海鳥が、私のなかの孤独の形であつた。それはやがて、だれもゐない夜の渚にそそぐつめたい月光となり、私のすべてであつたあの人への、かなしい祈りの歌(レクイエム)へと深く沈んでいつた。
人は失つたものの大きさを、どうしてこれほどまでに歌はなければならないのだらう。私はただ、風のやうにすぎてゆく時間のなかで、消え去つてゆく面影を、言葉といふあやうい器にすくいとらうと試みたにすぎない。
ここにあるのは、ひとつの古い追憶であり、同時に、いまも私の胸のなかで鳴りやまない音楽の、ささやかな調べである。



あの夏の日のあかるい渚は どこへ行つたのだらう
おまへとふたり 白い砂の上に並べた貝殻
きらめく波は 永遠の幸福を歌ふやうに
私たちの足元を やさしく濡らしてゐたのに
いまはただ 誰もゐないつめたい白浜に立ち
私はひとりで すぎて去つた時間をかへりみる
夕日はあんなにも かなしく赤く燃えあがり
おまへの面影を はるかな波の彼方へ連れてゆく
夢であつたなら どれほどよかつたらう
おまへの呼ぶ声が いまも風のなかに聴こえる
追憶はただ 満ちてはひく潮のやうに
もう届かないその手を 私は暗がりにのばす
月光がしづかに 砂の上の孤独を照らしだすまで
私はここにゐる おまへの失はれた光をさがして


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