眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

朝の祈り

小説/詩

哀しみの果てに 私はやうやく気づいたのだつた
おまへはもう どこへも行きはしないのだと
白々ときらめきはじめた この砂浜のひかり
寄せてはかへる波の そのすべての響きのなかに
もう涙を流すのはやめよう つめたい風のなかで
おまへがくれた優しさは いまも私を温めてゐる
あんなに深く愛し あんなに深く傷ついた日日も
すべては美しいひとつの記憶として ここにある
さやうなら 私のたいせつな、あかるい幻影(まぼろし)
月光が消え去り あたらしい朝がくるやうに
私はこの孤独を しづかに抱きしめて歩きだす
波打ち際にのこる ふたつの足跡は消えても
おまへは私の胸のなかで 永遠に生きつづける
透きとおる空のむかうから 私を見守りながら

あとがき
夜が明けて、窓のむかうに白々としたあたらしい光がさしこむのを、私はしづかに見てゐる。
哀しみの果てといふ場所がもしもあるとするならば、それは決して暗闇の底ではなく、こんな風に透きとおつた朝の光に満ちた、静寂のなぎさなのでせう。おまへのゐない世界を生きることは、いまも私にとってつめたい風に吹かれるやうな寂しさを伴ふけれど、その風のなかにさえ、おまへが残してくれた優しさがたしかに交じつてゐるのを、私は知つてゐる。
このささやかな四編の詩集を、いまはもう遠い星の国へ行ってしまつたあの方の魂と、そして、かつて白浜のあかるい渚でともに夢を見た、私たちのあどけない日日に捧げたい。
頁を閉じるいま、私の心はあの波のやうに、おだやかに、ただおだやかに凪いでゐる。


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