眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

霧のなかの出発

小説/詩

夜が明けても、光は僕を照らさない
ただ白い霧が、すつぽりと世界を包んでゐる
僕はランプを消し、冷え切つた窓を閉めて
届くことのない手紙を、そつとポケットに仕舞ふ
すべては霧の彼方に、淡く消え去つてゆく
おまへへの哀しみも、あの都会(まち)の記憶も
僕はひとり、濡れた草を踏んで歩き出す
どこへ行くあてもない、この白い朝のなかに
振り返れば、僕の過ごした小さな小屋も
またたく間に、霧の海へと沈んでゆく
――さようなら、僕の愛した幻よ
僕はただ、風の鳴る方へ、足を進めてゆこう
孤独のゆくへ
霧のなかをどこまで歩いても、景色は変わらない
ただ冷たい滴(しずく)が、僕の頬を濡らすばかりだ
都会(まち)の熱さも、あの夜のランプの灯火(ともしび)も
いまはもう、遠い夢のやうに希薄(うす)れてゆく
おまへの名前を、僕はもう呟(つぶや)かない
この白い孤独のなかでは、言葉さえも凍てついて
ただ僕の規則正しい足音だけが
誰にも聴かれることなく、霧の底に響いてゐる
どこへ辿り着けば、この寒さは終わるのだらう
ふり返っても、前を見ても、ただ白まぶしい闇
――僕はひとりの、果てしない旅人だ
この冷たい孤独を、いつまでも道連れにしながら


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