眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

夜明け前のブルース

日記

トレンチコートの襟を立てても、
染みついたタバコの匂いは消えやしない。
ジッポの火が赤くうねり、
灰皿の山が昨日の死屍累々を語る。
針が溝を叩く音がする。
ビリーの掠れた声が、
夜と朝の隙間に錆びた楔を打ち込む。
Body and soul――
魂ごとくれてやったさ_
中身の抜けたバーボンと、冷めきったコーヒー。
どちらも喉を焼くだけのガラクタだ。
窓の外で、世界が白々しく目を覚ます。
ネオンサインの残り火が消え、
路地裏の影がゆっくりと形を失っていく。
誰もいない、何も救われない、
ただ、あの歌声だけが足元に転がっている。
錆びたスコッチ
割れたガラスの破片のような雨を浴び、
たどり着いたのは、いつもの地下の穴倉だ。
馴染みのマスターは何も聞かない。
琥珀色の液体が入ったグラスを無言で差し出す。
カウンターの端、置き去りにされたジッポ・ライター。
あの女が最後に触れた、安物の真鍮。
指先で弄べば、まだ女の体温が残っている気がした。
だが、そんな感傷は一瞬で撥ね退けられる。
深まる夜の闇が、意識の輪郭を少しずつ削り取っていく。
痛みの感覚さえ、店内に流れるビリーの歌声のベースラインに溶けていく。
「Body and soul」――。
魂はあの列車に乗って消えた。
残されたのは、ただ静かに終わりの時を待つ、虚無を抱えたこの身体だけだ。
グラスの中の琥珀色は、濁りゆく視界の中で鈍く光っている。
夜明けはもう、届かない場所にある。


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