眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

真夏の陽炎 最終

小説/詩

あかるい雲が 青い山脈のうえに湧きあがり
林のなかの径は 木漏れ日の斑(まだら)に濡れてゐる
風はどこかで 小さなオルゴールを鳴らすやうに
乾いたひかりの葉を ひそかに揺らしてゐるのだった
あすこの地平に 揺らめく水のまぼろし
それは僕が いつか置き忘れてきた日々のやうに
ひとつの歌が 熱い大気に燃えつきては
かすかな時間の底へ ほどけて消える
少年だった日の あの遠い眼差しは
もう届かない はるかなノートの余白から
今の僕を 静かにみつめてゐるのだらうか
陽炎はただ あをじろい夢のやうに立ちのぼり
追ひかける僕の指先を すりぬけてゆく
すべては真夏の ひかりのなかの出来事だった_

光のなかに すべての音は死に絶え
だれも歩かない径に ただ真昼がせき止まる
風はとほい樹々の梢に 身を隠したまま
眠る大気の底で ひそかに息をひそめてゐるのだった
あすこの地平に 揺らめく水のまぼろし
それは僕が いつか夢にみた永遠のやうに
ひとつの名前をもたない時間が 白く燃えつきては
かすかな灰のやうに 記憶のすそへ消える
すべてのものは 深く眼を閉じてゐるのだらうか
もう戻らない はるかな子供のころの午後のやうに
世界は静かに 僕を忘れてゆくだらうか
陽炎はただ あをじろい夢のやうに立ちのぼり
追ひかける僕の指先を すりぬけてゆく
すべては真夏の ひかりのなかの出来事だった




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