眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

虚蝉(うつせみ)によせて

小説/詩

そして 僕は また かへつて來る
あの灼けた夏の午後の 影のなかに
おまへは そこに かたちをのこして
光る風のなかで じつと だまつてゐる
かつて 歌は ここを通りすぎ
すきとほる羽音が 空の青さに吸はれた
いまは もう だれも問ふものもない
草の茎のうえの ひそやかな抜け殻よ
おまへは ひとつの季節を生き、そして
すべてを擲(なげう)って ここに留まった
あたたかい血のめぐりも 遠い夢も
あともなく脱ぎすてて 澄んだ銀の殻よ
僕は おまへに問ふすべを知らない
ただ 指先で そっとふれてみるだけだ
なつかしい過去(むかし)の ひかりが
冷たい空気に ほのかに反射(かへ)るだけだ
風よ! 語れ、あの日のことを
美しく過ぎにし ものたちの足音を
僕は まどろみのなかで 聞いてゐる
おまへのすきとほる背中に あおぐ空の青を


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