真夏の灯台
灼熱の光は、ぼくらを刺す刃(やいば)。
淡い薄瑠璃(うするり)の空を、ひき裂くやうに、
白い灯台は、ただ、突っ立ってゐる。
逆光のなかに、君を置き去りにしたまま。
淡い薄瑠璃(うするり)の空を、ひき裂くやうに、
白い灯台は、ただ、突っ立ってゐる。
逆光のなかに、君を置き去りにしたまま。
風は吹きつのり、砂を噛む。
それは、ちぎれた幸福の吐息(といき)。
海鳥たちは、パステルをこぼした波の上、
狂ったやうに、君の名を呼びつづけてゐる。
それは、ちぎれた幸福の吐息(といき)。
海鳥たちは、パステルをこぼした波の上、
狂ったやうに、君の名を呼びつづけてゐる。
あんなに烈(はげ)しく、
あんなに眩(まぶ)しく、
光がすべてを焼き尽くすから、
ぼくらが交はした約束も、もう見えない。
あんなに眩(まぶ)しく、
光がすべてを焼き尽くすから、
ぼくらが交はした約束も、もう見えない。
海鳥よ、おまへの鋭い叫びは、
風にさらはれ、波に砕かれ、
かへらないあの日への、
あまりに痛切な、ただ一つの調べ。
風にさらはれ、波に砕かれ、
かへらないあの日への、
あまりに痛切な、ただ一つの調べ。
すべては光のなかに没(しづ)む。
引き裂かれた風のなかで、
灯台だけが、冷たく凍りつき、
薄紫の夕暮を、ただ待ってゐる。
引き裂かれた風のなかで、
灯台だけが、冷たく凍りつき、
薄紫の夕暮を、ただ待ってゐる。
あの真夏のまばゆさのなかに、ぼくらはたしかに何かを失ってしまった。光が強ければ強いほど、ぼくらの影は濃く、引き裂かれてゆく。海鳥の鋭い羽ばたきと、どこまでも冷たい灯台の白さ。薄瑠璃の空が薄紫の闇へと溶けてゆくとき、ぼくの耳には、もう届かない君の声が、風の音にまじっていつまでも響いてゐるのだ。