眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

真夏の灯台

小説/詩

灼熱の光は、ぼくらを刺す刃(やいば)。
淡い薄瑠璃(うするり)の空を、ひき裂くやうに、
白い灯台は、ただ、突っ立ってゐる。
逆光のなかに、君を置き去りにしたまま。
風は吹きつのり、砂を噛む。
それは、ちぎれた幸福の吐息(といき)。
海鳥たちは、パステルをこぼした波の上、
狂ったやうに、君の名を呼びつづけてゐる。
あんなに烈(はげ)しく、
あんなに眩(まぶ)しく、
光がすべてを焼き尽くすから、
ぼくらが交はした約束も、もう見えない。
海鳥よ、おまへの鋭い叫びは、
風にさらはれ、波に砕かれ、
かへらないあの日への、
あまりに痛切な、ただ一つの調べ。
すべては光のなかに没(しづ)む。
引き裂かれた風のなかで、
灯台だけが、冷たく凍りつき、
薄紫の夕暮を、ただ待ってゐる。

あの真夏のまばゆさのなかに、ぼくらはたしかに何かを失ってしまった。光が強ければ強いほど、ぼくらの影は濃く、引き裂かれてゆく。海鳥の鋭い羽ばたきと、どこまでも冷たい灯台の白さ。薄瑠璃の空が薄紫の闇へと溶けてゆくとき、ぼくの耳には、もう届かない君の声が、風の音にまじっていつまでも響いてゐるのだ。


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