眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

悲しきサーカスの残り香――雨の朝に

小説/詩

あした 目ざめれば 窓のそとは
しづかな細い雨が すべてを濡らしてゐた
あんなに賑やかだつた 幻のやうな場所も
いまはただ 蘆(あし)のやうに青く沈んで
草の原にのこされた 昨日の足あとは
水たまりの底で そつとぼやけてゆく
おしろいの匂いも 少女の軽い靴音も
みんな つめたい土のなかに吸はれて
あゝ わたくしは覚えている
あの小さな天幕の 破れたすきまから
一瞬だけこぼれた 星のやうなひかりを
それは雨のなかの いまはもう見えない夢
風はもう うたふのをやめて
ひとすじの煙のやうに ひくく這ひまはり
わたくしの心は 濡れた葉柳のやうに
ただ黙つて その消えゆくものをみつめる
すべては去つたのだ あたらしく
雨のなかに すべては美しく溶け去つた
ただ一つの かなしい残り香さえ
かすかな朝の ひかりに変へながら


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