眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

悲しきサーカスの残り香

小説/詩

それは一つの小さな夢のあと
草の原にのこされた 黄いろい輪と
すこしのあいだ空に揺れてゐた 音楽の音――
誰もゐない 五月の午後の微風(そよふ)きのなかで
天幕(てんまく)はもう どこかへたためられて去り
旗も とほうもない遠くの空へ消えた
けれど そこにはまだ おもかげが漂ってゐる
おしろいと すこし焦げた麦藁(むぎわら)の匂いとが
あゝ あの夜 小さな木の椅子のうえで
少女は空を飛ぶ鳥のやうに身を投げた
そして観衆のどよめきの隙間に
永遠(とわ)のよろこびと 小さなかなしみをみた
風よ お前はなぜ いつまでもそこを離れず
まはつてゐるのか その古びた足あとのまはりを?
わたくしはただ 過ぎ去ったものたちのために
こころのなかに 静かなランプをともす
もうすぐ陽が沈む 草の葉は露に濡れ
はるかな町で 夕暮れの鐘が鳴るだらう
さうして誰もいなかつた野べの記憶は
ただ美しく あたらしく 遠ざかつてゆく


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