眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

届かざる薄紅

小説/詩

若き兵士の冷え切った懐(ふところ)から、
くしゃくしゃに丸められた一通の紙片が現れる。
それは、私が教えた文字で綴られた、母への便り。
だが、その素朴な言葉の半分は、
彼の胸から噴き出した、鮮烈な血によって覆い隠されていた。
『お母さん、こちらはもうすぐ冬が来ます。
 毎日、先生の言った「美しい祖国」のために戦っています。
 だけど、夜になると寒くて、お母さんの焼くパンの匂いが恋しい。
 もし僕が帰れたら、またあの白樺の林を一緒に歩きましょうね。』
「ああ、ああ、神よ! これが私の放った言葉の結末か!」
手紙を握りしめる私の指が、まだ乾かぬ若者の血で赤く汚れていく。
彼は飢えと恐怖に震えながら、最期まで私を信じていた。
私が説いた「大義」という名の、実体のない幻影を!
母の温もりしか知らなかった純真な少年を、
私は、言葉という名の引き金で撃ち殺したのだ!
激しい豪雨が、戦場を、そして私の五体を容赦なく叩きつける。
雨水は手紙の血を滲ませ、まるで紙そのものが涙を流しているようだ。
遠く離れた故郷の村で、何も知らずに息子の帰りを待つ母。
その優しく哀しい瞳を想うとき、私の胸は爆発せんばかりに引き裂かれる。
「叫べ、嵐よ! 呪え、この大気よ!」
私は泥の中に膝をつき、血染めの手紙を抱いて咆哮する。
この手紙を母に届けることさえ、今の私には許されない。
私は一生、この血の匂いから逃れられない。
理想に狂った知識人の胸に、届かぬ母への愛の言葉が、
消えない烙印のように、いま深く、深く刻み込まれた



人間の条件とは、「理想を抱いて天を目指しながらも、泥濘(どろ)にまみれた大地から足を離せない」という絶対的な矛盾そのものです


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