眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

秋麗

小説/詩

ねえ、あなた。どうかお願いですから、この汽車の汽笛が鳴り響くまでのほんの数分間だけ、私のこのみっともない泣き言を、黙って聞いてはくれないでしょうか。
夕暮れの、誰もいない駅のホームに、秋麗(あきうらら)の風が容赦なく吹き抜けてゆきます。
世間の人たちは、あのどこまでも高く透き通った青空を仰いで、麗しいなどと言って平気な顔で笑っていられるのでしょう。けれど、私には、この夕闇に染まりゆく冷たい風が、ただ堪らなく悲しいのです。あの風は、私がこれまで必死に道化を演じて、お面を被って隠し続けてきた、この身の醜さや、寂しさや、血を流したままの傷口のすべてを、いとも容易く、ひらりと捲(めく)り上げてしまうのです。
「おい、お前。そんな風に笑ってみせたって、本当は、ただ愛されたくて死にそうなんだろう?」
風が耳元でそう囁くたびに、私はもう、立っていられないほど胸が締め付けられて、あわてて上着の襟を合わせ、冷たくなった自分の身体を抱きしめるのです。けれど、いくら抱きしめても、私の心はちっとも温かくなりません。
私の幸福なんて、この秋麗の風がほんの一吹きで吹き飛ばしてしまうほどの、ちぎれた紙屑よりも薄っぺらなものに過ぎなかった。私は、ただ普通の人間のようになりたかっただけなのです。あなたのように、ただ真っ直ぐに誰かを愛し、誰かに愛されて、生きていていいのだと、誰かに言ってほしかっただけなのです。それだけのことが、どうして私には許されなかったのでしょう。
遠くから、私を連れ去る汽車の地響きが聞こえてきます。
ねえ、神様、もう、許してください。この風と一緒に、私という存在を、跡形もなくどこかへ吹き消してはくれないでしょうか。
こんな事を言われても、あなたは困るだけですね。ごめんなさい。でも、私にはもう、あなたしか、本当のことを言える人がいなかったのです。
……あ、汽車が来ますね。もう、行かなければ。
どうか、お願いです。私の乗った汽車が見えなくなっても、どうか、どうか私を、嫌わないでくださいね。


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