眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

破壊と偽善2

小説/詩

ねえ、あなたも薄々、気がついているのでしょう?
 この「社会」なんて大層な名前のついたお行儀の良い仕組みが、実はとっくに、中身のないガラガラの手落ち袋みたいになっているってことに。
 みんな、壊したがっているんですよ。
 口では「平和」だの「幸福」だの、まるで仕立ておろしの綺麗な着物みたいな言葉を並べていますけれど、本心じゃあ、この退屈極まる世の中が、爆弾か何かで一瞬のうちに、めちゃくちゃに破壊されてしまえばいいと願っているんです。だって、そうでしょう? 毎朝、判で押したように満員電車に揺られて、お互いの足を踏んづけ合いながら、それでも顔だけは澄ましている。あの薄気味悪い光景を思い浮かべるだけで、私は自分の首をぐっと絞められているような心地がして、いっそ世界ごと、何もかも粉々に吹き飛んでしまえと叫びたくなる。
 それを邪魔しているのが、あの、えたいの知れない「偽善」という怪物なんです。
 社会の「善意」なんてものは、すべて裏地がひっくり返った偽物ですよ。
 たとえば、ほら、テレビや新聞が「かわいそうな人々を救おう」なんて大声で呼びかけている。あなた、あれを本気で信じていらっしゃいますか?
 あれはね、誰かを救いたいからやっているんじゃないんです。「私たちはこんなに正しいことをしている、立派な人間なのだ」という、その滑稽極まる上品なポーズを、鏡に映してうっとり眺めたいだけなんですよ。人間の施す親切なんて、すべて自分の良心を満足させるための、浅ましいマスターベーションに過ぎないんです。
 ああ、ごめんなさい。そんな嫌な顔をしないでください。
 あなたを責めているわけじゃない。一番に軽蔑されるべきは、こうしてあなたに向かって、いかにも「私は世間のからくりを見抜いている」という顔をして、高尚な絶望を気取っている、この私自身の文章なんです。これだって、あなたに「なんて繊細で、純粋な人なんだろう」と思われたくて書いている、卑劣きわまる偽善ではないですか。
 世間、というものは、お互いに「良い人」の仮面を被り、壊れやすいガラス細工のような体裁を、そっと抱え持って歩いているお化け屋敷です。
「お辛いでしょう」
「いいえ、あなたのおかげで」
 そんな挨拶を交わしながら、腹の中では、相手の足がもつれてドブに真っ逆さまに落ちてしまえばいい、と念じている。そうして、本当に相手が落ちたなら、今度は大急ぎで顔をしかめ、「まあ、大変だ!」と叫んで助け出す。その時の、自分の胸に湧き上がる、あの浅ましい満足感。
 いっそ、すべてを破壊してしまえばいい。
 その偽善の仮面も、上品な法律も、道徳も、全部。
 ……けれどもね、私たちは知っているはずです。
 もしも本当にすべてが破壊され、本当の地獄がやってきたとしても、私たちはやっぱり、その地獄の底で、「お先にどうぞ」「いえ、あなたこそ」と、互いに譲り合う、哀れな偽善の亡霊のままでいるに違いないということを。
 神様、どうか私を、本当の悪党にしてください。
 さもなければ、せめて、自分が偽善者であることさえ忘れてしまえるような、本物の白痴にしてください。
 ……なんてね、こんな大袈裟な告白をして、あなたを困らせてしまいましたね。
 どうか忘れてください。ただの、くだらない男の繰り言です。


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