背表紙の虚栄
第一部:背表紙の虚栄
翻訳物の分厚い哲学書
あるいは 難解を極めた思想の迷宮
奴らはそれを 武器のように小脇に抱え
カフェのテラスで 獲物を待つ
「凡人には理解できない」という 密かな愉悦が
安物の香水のように 鼻を突く
あるいは 難解を極めた思想の迷宮
奴らはそれを 武器のように小脇に抱え
カフェのテラスで 獲物を待つ
「凡人には理解できない」という 密かな愉悦が
安物の香水のように 鼻を突く
だがな 知識人
お前が読んだのは 著者の苦悩であって
お前の知性じゃない
難解な用語で 己の鎧を編み上げる前に
少しは気づいたらどうだ
その薄っぺらい自己主張が
一番の 無知を晒していることに
お前が読んだのは 著者の苦悩であって
お前の知性じゃない
難解な用語で 己の鎧を編み上げる前に
少しは気づいたらどうだ
その薄っぺらい自己主張が
一番の 無知を晒していることに
第二部:ペダントリーの夜
「レヴィ=ストロースによれば」「カミュの言う不条理とは」
覚えたての名前を 弾丸のように乱射する
まるで 自分の言葉であるかのように
奴らは 巨人の肩に乗り
そこから 見下ろした景色を 誇らしげに語る
覚えたての名前を 弾丸のように乱射する
まるで 自分の言葉であるかのように
奴らは 巨人の肩に乗り
そこから 見下ろした景色を 誇らしげに語る
いい加減にしろよ
夜の酒場に 衒学(ペダントリー)の煙が満ちる
他人の思想を 盗み聞きしただけで
自分が 革命家にでもなったつもりか
本当に その深淵を覗いた男は
言葉を失い
ただ 独り静かに 苦いバーボンを煽るものだ
夜の酒場に 衒学(ペダントリー)の煙が満ちる
他人の思想を 盗み聞きしただけで
自分が 革命家にでもなったつもりか
本当に その深淵を覗いた男は
言葉を失い
ただ 独り静かに 苦いバーボンを煽るものだ
第三部:灰皿の上のドグマ
誰も求めていない 独善(ドグマ)を語り尽くし
奴らは 満足そうに 席を立つ
自分の頭の良さを 世間に証明できたと
確信に満ちた 足取りで
奴らは 満足そうに 席を立つ
自分の頭の良さを 世間に証明できたと
確信に満ちた 足取りで
だが 憐れむべきは
自分の言葉を 一言も持たぬまま
記号の死体(文字)に 踊らされているその姿だ
硝煙の消えた 灰皿の向こう
本当に重みのある思想は
誰にも 語られることのない
沈黙の底に 沈んでいる_
自分の言葉を 一言も持たぬまま
記号の死体(文字)に 踊らされているその姿だ
硝煙の消えた 灰皿の向こう
本当に重みのある思想は
誰にも 語られることのない
沈黙の底に 沈んでいる_