窓辺の桔梗(ききょう)のソネット
うす紫の 桔梗のしづかなつぼみが
ひそやかにひらいて 秋の夜を告げる
わたしはひとり 古びた窓辺に寄りかかり
もう戻らない あのあたたかな記憶のために
ひそやかにひらいて 秋の夜を告げる
わたしはひとり 古びた窓辺に寄りかかり
もう戻らない あのあたたかな記憶のために
(おまへは 風にふるへる秋草よ
青いまたたきを 夜のしじまに灯しながら)
青いまたたきを 夜のしじまに灯しながら)
ねぢを巻きなおした ちひさなオルゴールが
硝子(がらす)のやうな音色を 優しくこぼし
かつてここに生きてゐた あかるい夏の日ざしを
冷たいカーテンは すつかり忘れてゐる
硝子(がらす)のやうな音色を 優しくこぼし
かつてここに生きてゐた あかるい夏の日ざしを
冷たいカーテンは すつかり忘れてゐる
ただ ひとひらのあどけない音(ね)が
色あせた花びらのむかうへ 流れてゆき
色あせた花びらのむかうへ 流れてゆき
わたしの孤独に そつと寄り添ふものは——
むかし誰かが口ずさんだ なつかしい歌のなごりだ。
むかし誰かが口ずさんだ なつかしい歌のなごりだ。